湘南太田鍼灸院

藤沢市鍼灸・マッサージ師会会員

2023/01/24

鍼治療とその効果とは

「鍼灸」は東洋医学の考えに基づいた治療法で、約2千年以上も前から心身の不調を整える治療法として受け継がれてきました。
本記事は鍼治療とその効果をご紹介いたします。

人体のツボとは

東洋医学ではツボを経穴と呼びますが、その昔ある部位を刺激すると病気が改善したという経験を重ね、点(経穴)が線(経絡:エネルギーが流れる通路)へと体系的にまとめていきました。
更に研究と経験を重ね、その系統も整理されてきました。それは約2千年以上も前の中国でのお話です。やがて中国で生まれた医学は朝鮮、そして日本へと伝わってきました。ツボの知識が日本に入ってきたのは奈良時代です。
解剖医学的には毛細血管やリンパ管が集中しているところにあるツボもあります。その場所では細胞が生まれ変わるとき、血液の循環が他の部位よりも多発的に行われています。しかしそれとは全く関係のない場所にあるツボもあります。ツボの位置は2006年のWHOで場所、数ともに統一化されました。数は361箇所とされています。
親指と人差し指の交差するつけ根に合谷(ごうこく)というツボがあります。合谷を刺激すると頭痛や目の疲れに効くと言われている効果的な万能ツボです。

合谷はこれまでは骨の関節部分と言われていました。しかし解剖してみると新しい場所にある合谷には動脈の孔があり、そこから何十本の毛細血管が走っています。
こういう場所に経絡があるのかと予測し、更にメスで切り進めてみるとそこには血管孔や脈絡細脈が多くあります。
このように解剖して分かる解剖的ツボがある一方で、解剖しても何も出てこないが確かに存在する機能的ツボがあります。
機能的ツボは「ここを刺激すると内臓に反射している」という経験から得られたツボとその位置です。
解剖学的ツボは解剖と研究によってその効果を証明できますが、機能的ツボはその論理はわからないけど、経験から効果を証明できるツボです。
例えば妊娠中の女性の逆子を治すツボは足の小指です。ここを刺激すると見事に逆子が正常の位置に戻ります。しかしなぜそうなるのかはわからないため、機能的ツボであると思うのです。
ツボの場所はレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵と、2000年前に描かれた中国の経穴の絵に大差がありません。また現在の医学でも毛細血管が集まっている場所はそれら絵とほとんど変わっていないのですが、エビデンス上の証明が遅れているというのが現実です。

脳の中にセロトニンやオキシトシン等、自分自身がもともと持っている痛みを制御するホルモンがあります。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が働くと心と身体は興奮状態になります。一方副交感神経が働くと逆に血圧は下がり、心と身体が休んでいる状態になります。
交感神経は骨格筋等をコントロールしますが活発化すると、痛みを抑制するホルモンを作ることができなくなります。
また副交感神経は内臓や神経をコントロールする役割も果たしているため、副交感神経が働かないと精神面でダメージを受けます。
本来は痛みを抑制するホルモンの分泌により、身体的、心理的な痛みを抑制しますが、うまく機能せずに痛みが続く場合があります。
鍼はそのようなとき、脳の電磁波やホルモンの分泌をコントロールしたり、痛みの伝わる道をシャットダウンしたりと人が持つ治癒力をサポートする効果的な働きを持っています。

鍼は血液の循環をサポートする

血管には小さな穴が無数に空いています。血管のそばには細胞がたくさんあります。血管はその穴から細胞へ酸素を送ります。細胞は酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出します。
血管はその二酸化炭素も運んでいるのです。しかし充分に機能していない場合、その場所に二酸化炭素や老廃物が滞ります。また血管の中にもアテロームと言って血栓ができたりします。
鍼をその血管の周辺に打つことで刺激を与えます。そうすると老廃物が血管に乗って循環され、尿などによって体外へ排出されるのです。鍼はこのように細胞の活性の手助け、血液の循環をサポートする効果的な役割も持っています。

注射針は先が鋭く尖っているので、血管に刺しそこに薬物を注入します。しかし鍼の先端は尖ってなく丸くなっています。肉眼では尖っているように見えますが、拡大してみると実は丸くなっているのです。そして血管は柔らかいので、どんなに血管を狙って鍼を刺してもスルッと避けるので血管には刺さりません。血管のまわりに刺さります。
鍼を打つとその周辺は肌がほんのり赤くなります。それをフレアと言うのですが、その場所でタンパク質分解が行われていて、老廃物などが壊れ始めている現象なのです。
細胞には受容器と言って、血管から運ばれる酸素や栄養を受け入れる器官が複数あります。ストレスなどで機能しなくなった受容器を鍼によって効果的に活性化させることもできます。

鍼は弛緩した筋肉に緊張を与える

人間の身体には弱い電気が流れていますが、何らかの障害により滞っている場合があります。そこに鍼を打ち刺激を与えることで滞っていた電気が流れ始めます。
瞬間的にバーンと跳ねた感じで疎通し始めるのですね。例えば皺、皺は筋肉が弛緩している状態とも言えます。
だら~んと伸びてしまっている状態です。そこに鍼を打って刺激を与えると、前述のようにで電気が流れ始めます。弛緩した状態の筋肉がビックリするのです。
筋肉の中にある筋紡錘がギュッと収縮するイメージです。美容鍼はこの原理を利用しています。弛緩している顔の筋肉、額、顎、目尻などに鍼を打ち刺激を与えることで筋肉に緊張を与え、皺を伸ばす効果が期待できます。
顔に鍼を打つと、皮膚がほんのりと赤くなります。それも前述したように、フレア現象が発生していて筋肉を緊張させるとともに、老廃物などの排出も行っています。

鍼はRNAに作用する

人にはDNAと同じくRNA(リボ核酸)という塩基があります。DNAと同じく情報を保存する役割を持っています。DNAは情報を永久的に保存しますが、RNAは一時的に保存します。
RNAがコピーされるとき、正常な細胞の情報をコピーするのが普通ですがしかし、間違った情報を戻す場合があります。せっかく細胞が生まれ変わっても間違った情報がコピーされることがあります。

それが慢性疼痛の一因であるということがわかっています。患部は治癒されているにも関わらず、いつまでも痛みが続く慢性痛の一因はここにあります。体内の細胞は約60兆個と言われており、そのどれもが少しづつ入れ替わります。
腸は数日、肌は1ヶ月、血液は4ヶ月、骨は5ヶ月と言われていますが、誤った情報をコピーし続けないよう、鍼はこの悪しき連鎖を壊して、トランスファーRNAと言って新しい情報を入れることができることが証明されています。
そのため鍼治療は1度では効果が見えにくく、鍼は一定期間継続する必要があります。

鍼は交感神経と副交感神経に作用する

自律神経には交感神経(身体を活動的に)と副交感神経(癒やしと休養)があります。両者はシーソーのようなバランスととらわれがちですが、両方とも上げることがとても大切です。
元気な人は交感神経が高く、副交感神経が低いと思われがちですが、両方ともバランスよく高いのです。交感神経が高く、副交感神経が弱い人は体が弱かったりします。
逆に副交感神経が高く、交感神経が低いと心的な病になることもあります。つまりシーソーのように互いが上がったり下がったりとバランスと取っているわけではなく、両方を上げるバランスが大切です。

高齢者は低めだけど安定したバランスを保っている方も多く元気な方もたくさんいらっしゃいます。

全人的医療では、鍼を使ってこの交感神経と副交感神経のバランスを調整する治療も行います。

交感神経は高く副交感神経は低い
交感神経は低く副交感神経は高い
交感神経副交感神経ともに高い
交感神経副交感神経ともに低い

この4つのパタンがありますが、患者さんに合わせて鍼で治療していきます。交感神経と副交感神経が共に高いと良さそうですがありますが、高すぎてもいけません。その状態は弓を常にいっぱいに引っ張っているイメージです。
いざという時、弓が切れて矢が飛ばなくるのと一緒で、だいたい70~80%くらいを保っているのがちょうどいいと言われています。
しかし鍼の力だけで、ちょうどよいバランスを保てるわけではありません。鍼は自然治癒の力を大切にしています。つまり患者さんご本人が「治りたい」「元気になりたい」という意識とイメージトレーニングが鍼治療では大事になってきます。
「病は気から」とはよく言いますが、その通りでやはり大切なのは患者さん本人の意思なのです。

まとめ

鍼灸。その歴史は長く現代人の体のさまざまな不調を361箇所のツボを刺激する事により、血液、自律神経レベルから改善することが期待できます。ストレスなどで機能しなくなった受容器を鍼によって効果的に活性化させるとともに、鍼は自然治癒の力を大切にし、患者さんが「治りたい」「元気になりたい」という意思のもと手助け出来る効果的な治療手段なのです。

TOPへ戻る